制作会社が外注に支払うサイクルは、納品月の月末締め、翌月末払いです。これは業界の主流で、短くしてほしいと言われたこともほとんどありません。
つまり独立した人は、最初の入金まで最長2ヶ月待つことになります。ここを理解しないまま始めると、初月から3ヶ月目で止まります。
発注する側から見た、請求と入金の話をします。
なぜ支払いサイトは縮まらないのか
「納品した月に払ってほしい」と言われれば、気持ちは分かります。ただ、応じていません。
理由は単純で、納品月に支払うと、会社全体の資金サイクルが乱れるからです。締め日を納品月末に置き、翌月末に払う。この形が崩れると、入金と支払いのタイミングがずれて、経理が回らなくなります。
だから交渉の余地があるかというと、正直あまりありません。変えられない前提として設計したほうが早いです。
大手・代理店の「請求書の提出期限」に注意
これは知らない人が多いと思います。
請求書の不備で支払いが遅れた例は、実はあまりありません。 不備があっても、こちらで対応して即日払うことのほうが多いです。
問題は別のところにあります。大手や代理店になると、「請求月の◯営業日以内に請求書を処理しなければならない」という社内ルールがあることが多いのです。
この期日を超えると、支払いは翌月に回ります。
内容の不備ではなく、単に提出が遅れただけで1ヶ月ずれる。ここは実際によく起きています。相手が大きい会社ほど、締切が早く、例外が効きません。
なお、インボイスの登録番号は基本的に求められます。用意しておいてください。
実際に多い不備
- 金額の間違い(これが一番多い)
- 請求月をずらしてほしい、という相談
連絡は経理担当か、請求担当の方にしています。気まずさは特にありません。間違いは直せば済む話なので、そこを恐れる必要はないです。
詰まるのは、最初の3ヶ月
独立した人が資金繰りで最初に詰まるのは、初月から3ヶ月目です。
理由はここまでの話の通りで、納品月末締めの翌月末払いというサイクルに乗るまでに、時間がかかるからです。仕事が取れていないから詰まるのではありません。取れていても詰まります。
いくら持っておくべきか
半年間生活できるだけの資金があれば、独立直後に困ることはないと思います。
Web業界は初期コストがかからないのが救いです。生活費が月30万円なら、150万〜200万円程度が手元にあれば足ります。設備投資が必要な業種に比べれば、ハードルは低いほうです。
案件の性質で、資金繰りの難易度が変わる
この業界の構造上、納品しないと請求が立てられません。 だから受ける案件の種類が、そのままキャッシュフローの形になります。
| 案件の種類 | 納品までの期間 | 資金繰りへの影響 |
|---|---|---|
| ブランドサイト・採用サイト | 数ヶ月 | 長期間、請求が立たない |
| LP・バナーなどのダイレクトクリエイティブ | 1ヶ月単位 | 毎月の請求が立てやすい |
| アクセス解析・サイト改善のコンサル | 保守契約 | 毎月固定で入る |
独立直後は、保守や分析で毎月の固定収入を作れる案件を1本でも持てると、資金繰りが一気に楽になります。大型案件だけを追いかけると、納品までの数ヶ月が丸ごと無収入になります。
1,000万円の案件を、着手金なしで受けた話
私自身の経験です。
1,000万円規模の案件で、着手金がないものがありました。しかも納品できるのは約1年後です。
このときは受けました。毎月の保守案件があり、売上の読みが立っていたからです。足元が温まっている状態だったので、1年後の入金を待てました。
逆に言えば、それがなければ受けられません。 1,000万円という金額に目を奪われますが、1年後にしか入らない1,000万円は、その1年を越せなければ意味がありません。
だから、納品月が数ヶ月先になる案件では、次の2つを必ず意識してください。
- 売上の読みを見ながら、引き受けるかを判断する
- 着手金を必ずもらえるか確認する
金額の大きさは、資金繰りの安全性とは無関係です。
固定費は月10万円ほど見ておく
自宅で作業する前提で、実際にかかっているものを挙げます。
- AIツール類:6〜7万円 — 今はもう契約しないという選択肢がない
- Adobe:2万円
- Google Workspace / Microsoft 365 / チャットワーク / ネット回線 など
合計で月10万円ほど。 多く見積もっても、この程度に収まります。
AIの比率が大きく見えるかもしれませんが、ここは削るところではありません。
二度目がない請求書
ここからが、発注側として一番言いたいことです。
最初に出した金額に対して、後追いで費用を追加するのは避けてください。
たまにあるのが、こういうケースです。
当初提示した見積りに対して、修正が多く発生した。
そのとき費用のことは何も伝えられず、請求の段階で勝手に上乗せされていた。
正直に言うと、こういう方に次を依頼することはありません。
金額が増えること自体が問題ではありません。事前に言われていないことが問題です。増えるなら増えると、その時点で言ってもらえれば調整できます。請求書で初めて知ると、こちらは社内で説明ができません。心証も悪くなり、単純に依頼しづらくなります。
修正が膨らんだ時点で一言連絡する。 これだけで、次の発注が続くかどうかが変わります。
業界価格を知らない人は、すぐ分かる
もう一つ。フリーランスとして、業界の価格感は意識しておいたほうがいいです。
業界価格を知らない人は、経験が足りないか、その業界であまり仕事をしていないのだろうな、と見えてしまいます。
逆に、業界で仕事をしていれば「この対応ならこのくらいの金額」という感覚が自然に身につきます。そして自分の工数に対する対価が妥当かどうかを、自分で判断できるようになります。
見積りの精度は、そのまま経験値の表示です。発注側は、そこを見ています。
まとめ
- 支払いは納品月末締め・翌月末払い。これは変わらない前提として設計する
- 大手・代理店は請求書の提出期限があり、遅れると1ヶ月ずれる
- 詰まるのは最初の3ヶ月。生活費の半年分(月30万なら150〜200万)を用意しておく
- 毎月固定で入る案件を1本持つと、資金繰りは劇的に安定する
- 後追いの費用追加はしない。 増えるなら、その場で言う
請求書は事務作業に見えますが、発注側から見れば次も頼むかどうかの判断材料です。
※記事内に広告が含まれています



