「Web制作の仕事はAIでなくなるのか」を、Web制作現場の立場から書きます。
結論から言うと、職種単位でなくなることはありません。
このテーマの記事は多いのですが、書いているのはスクールや人材エージェントの運営メディアがほとんどで、根拠も「デザイナー◯◯人に聞いた」という受注側のアンケートに偏っています。ここでは、Web制作会社を経営して実際に発注している側から、自社の見積書で何が消えて何が残ったかを書きます。
AIで補える工程が増えつつある
実際の見積書から、撮影費という項目が消えつつあります。
バナーの動画生成をAIが担うようになり、撮影という工程が要らなくなったからです。
ただし、同額を横にスライドさせたわけではありません。総額は以前より安くなりました。
原稿を作る工程も同じです。記事作成、原稿作成についても、ほとんどをAIが担うようになりました。以前は外に出していた工程が、いまはAIが担っています。
作業時間は、実際にこれだけ変わった
なぜ項目が消えるのか。作業時間の実測値を出します。
| 作業 | AI導入前 | 現在 |
|---|---|---|
| 競合調査 | 2日〜3日 | 1時間〜2時間 |
| 構成案の骨子 | 2日 | 半日 |
| 動画バナーの構成案 | 半日〜1日 | 1時間 |
| 企画書 | 1週間 | 1日〜2日 |
同じ調査を、同じ精度で、この時間で出しています。
競合調査に、いま何日もらっていますか。 ここが2〜3日のままなら、その工数はいずれ見積から落ちます。落ちるというのは「値切られる」という意味ではなく、作業として計上する根拠がなくなるということです。
正直なところ、もうAIを使わないと今のスピード感には追いつけません。
一方で、まだ速くなっていない仕事が3つある
ここからが本題です。すべてが速くなったわけではありません。
どのような解析をするべきなのか。 アクセス解析をどう読み、そこから課題をどう立てるのか。この2つは、いまも自分でやったほうが早いときがあります。AIには、こちらから注意して渡してやる必要がある。
コピー案。 ここもまだ弱く、品質チェックとブラッシュアップが要ります。
契約プランを上げても、この3つは上がりませんでした。金額の問題ではないということです。
逆に、競合調査や調べ物についてはかなり強い。速くなったのは「調べる仕事」で、速くならなかったのは「決める仕事」でした。
減った時間は、消えたのではなく移動した
仕事がそのまま消えたわけではありません。
AIを使うために増えた作業があります。どのように指示を出すのか。プロンプトをどう作るのか。空いた時間の多くは、ここに移りました。
減った工数と増えた工数は、同じ種類のものではありません。片方は手を動かす時間で、もう片方は何をさせるかを決める時間です。
「AIが使えること」は、発注の理由にならない
ここが、受注する側と発注する側で認識がずれるところだと思います。
AIを使ってWebサイトを作ること自体は、簡単になりました。これから業界に入る人でも作れます。だからこそ、作れること自体には値段が付きにくくなっています。
肝心なのは、その良し悪しを判断できるかどうかです。効果が出るかどうかを判断できること。そこには経験則が要ります。
見極めと品質チェックができなければ、ただWebサイトを作るだけになります。それでは価値を出すのは難しい。
効果的かそうでないか、この判断が重要なのです。
ただAIを活用するだけでは、制作現場ではまだまだ通用しないのが現状です。
では、何を身につければいいのか
AIを触れることよりも、業界のトレンドを知っていることや、何が効果的かを知っていることのほうが重要になってきています。
具体的には、さきほど「まだ速くなっていない」と書いた3つです。
- アクセス解析を読んで、何が起きているかを説明できる
- そこから課題を立てて、次の施策を決められる
- 出てきたコピーやデザインを見て、効果的/効果的ではない、を言える
この3つは、AIに指示を出す側の能力なので、ツールが変わっても価値が落ちません。逆にここがないと、何を作らせても良し悪しが判断できず、結果として効果が出ない、ということが大いにあり得ます。
身につけ方は2つしかないと思っています。実務で数を踏むか、体系的に学ぶかです。独立して間もない人ほど、案件の幅が狭くて数を踏めないという問題にぶつかります。
※記事内に広告が含まれています
執筆者

Webディレクター
大下 司
1988年、福岡生まれ大阪育ち。大阪芸術大学を卒業。
制作会社でWEB制作の企画・制作・運用を10年以上を経て、2023年よりフリーランスとして活動。2026年より株式会社Sunを設立。
長年にわたるWeb業界での経験をもとに、Web業界に纏わる記事を執筆中。
自分のミッションは次世代を担う人材を創ること。



